オープニング・テーマ「光るとき」
羊文学インタビュー
TVアニメ「平家物語」のオープニング主題歌「光るとき」を書き下ろした羊文学へのインタビューをお届けします!
2020年にメジャーデビューした羊文学にとっては、この曲が初めてのTVアニメ主題歌。きらめきと優しさを感じさせる羊文学らしいオルタナティブロックの曲調でありつつ、「平家物語」の物語性にしっかりと寄り添った楽曲になっています。
ボーカル・ギターの塩塚モエカ、ベースの河西ゆりか、ドラムのフクダヒロアへのインタビューでは、楽曲の成り立ちから歌詞に込めた思い、アニメの魅力など様々に語ってもらいました。
羊文学としては初めてのTVアニメ主題歌の書き下ろしとなりましたが、いつもと違う作り方でしたか?
山田監督との話し合いではどんなやりとりがありましたか?
覚えてるのは二つあって、ひとつは「このアニメは平家の方々への鎮魂の気持ちで作っています」ということを言っていただいたこと。単にアニメを作るということ以上の、もっと大きな意味や気持ちを持ってやっているんだと思ったんです。もう一つ、楽曲に関しては「羊文学さんなりの平家物語をやってください」という風に言われて、それを手がかりに制作していました。
私は個人的にアニメが好きで、「けいおん!」とか山田監督の作品もすごく好きだったので、お話をいただいた時は単純にすごく嬉しかったです。山田監督はとても素敵な方でした。オープニングは本編で見られない、びわちゃんとか徳子さんの姿を描きたいと言っていたのも印象に残っています。
山田監督が仰った「鎮魂」という言葉は、曲や歌詞を書く上でキーワードになりましたか?
そうなっていると思います。脚本を最初に読ませていただいて、いろんなことを考えて作っていったのですが、それまでは平家の人たちに対して、ただ怖くて悪い人たちみたいな、なんとなく歴史で習った印象しかなくて。誤解していたと思ったんです。一人ひとりがちゃんと人間として生きてきて、美しいものを愛していたり、子供を大切に思う気持ちがあったり、今を生きる自分たちと同じような気持ちも持っていた。ちゃんと命だったんだっていうことを感じた。だから、つらい最後だったかもしれないけど、幸せに眠ってほしいというか。こうやってお話として受け継がれて存在が届いているよということを平家の人たちに言ってあげたいという気持ちで曲を書きました。
「最終回のストーリーは初めから決まっていたとしても今だけはここにあるよ 君のまま光ってゆけよ」という歌詞の一節も印象的ですが、これはどんなところから出てきた言葉なんでしょうか?
びわちゃんが未来が見えるというところですね。アニメを観ている側の私たちにとっても、平家物語はすごく有名な話だから、平家が負けて滅びていくのがわかっている。もし知らなくても第一話でそれがわかる。そういう前提で物語が進んでいくというのが衝撃的だったんですよね。そこから、私たちの人生も、必ず人は死ぬということがわかっていて、でもそこに向けてどう生きていくかみたいなものだなあとか、そういうことを考えた歌詞になりました。
曲名の「光るとき」は、どんな由来でしたか?
強いて言えば、命とか、そういうことなのかなと思います。この曲では「世界は美しいよ」と言っているんですけれど、ただ楽観的に世界が美しいということを言っているわけじゃなくて。平家の人たちは最後には極限的な状態にあって、それでも生きてかなきゃいけなくて。そういう時にどこに希望を見いだせるのかということを考えていたんです。今の時代でもそういう状況の中にいる人はいると思うし、そういう人たちのことを歌った曲なので。だから、命が光るとき、という気がします。
「平家物語」を観て印象に残ったシーンや、魅力に感じたポイントにはどんなものがありますか?
私はやっぱり最後の壇ノ浦の戦いのシーンですね。曲を書きながらその部分の脚本を何度も読みました。読むたびに「どうしよう」という気持ちになったのを覚えています。
どのシーンの絵もすごく綺麗ですよね。残酷なシーンでも、絵が綺麗だから悲しいというよりも切なさを感じてしまう。「未来は怖くても今は美しい」というセリフが結構出てくるなあと思って、そういうところも好きです。
可愛いシーンも好きですね。びわがほっぺを膨らませて平家の子供たちと対面するシーンとか、最初に女の子だとわかったときの女房たちの反応もすごく可愛くてよかったです。
哀愁あるキャラクターがすごく魅力的ですね。第四話で重盛が息を引き取った後にびわちゃんが「私には何もできない」と言って琵琶を弾くシーンがあって。その後に新しい眼が宿ったところとか。そういう、身近な人が亡くなった後にも近くに居るような感じがするところは、気持ちが動かされる瞬間でした。
魅力的なキャラクターは?
みんな好きですけれど、強いて言えば、徳子かな。すごく芯が強いけど、しなやかな感じで。最初のほうに「女は大変だから」という台詞もあったけれど、女性としてあの時代を生きるのは大変だっただろうなと思います。最後までしなやかに美しく、ちゃんと生きている強さが格好いいなと思います。
平家の偉い人の中でも、重盛は間を取り持つような珍しい人柄で。その人がずっと生きてたらどうなってかなって考えちゃいます。
好きなキャラクターはびわちゃんですね。ショートボブの感じがすごく好きです。
では最後に。「平家物語」を楽しみにしてきた人に向けてメッセージをお願いできますでしょうか?
絶対に最後まで観てほしいです。私は特別な作品だと心から思っていて。これからもずっと観られていく作品であってほしいし、たぶんそうなると思います。絵もとても美しいですし、何度観返しても、そのたびに発見がある。自分のペースで、長く大切に観てほしいと思っています。
全く違いました。「光るとき」に関しては平家物語というすごく大きなテーマがあって。それは人の命に関するお話でもあるんですよね。たくさんの平家の人たちが亡くなったわけだから、簡単には扱ってはいけないという思いもあった。監督と最初にお話をしたときにも、絶対に素晴らしいものを作りたい、ちょっとでも綻びがあっちゃいけないという気持ちもあって。今までやったことないことばかりの作曲でしたね。